薪ストーブの魅力


実家にストーブがあった若夫婦からの依頼で薪ストーブを初めて導入しました。その当時は薪ストーブの使用経験が無いまま設計しましたが、その火力と暖かさの質にぞっこんとなりました。あまり象徴的にならず、かつ大谷石の床の広がりを妨げないように、見慣れたドカッと居座る典型的な薪ストーブの姿とは対象的に、長さ450mmの薪が2〜3本入るだけのミニマムなサイズとし、アメリカのシェーカーのストーブを参考に、脚を細くしすっと浮いたような軽やかな存在感となりました。9mm厚の鋼板でのオーダーメードの薪ストーブです。

その経験を活かし、別荘の囲炉裏も薪ストーブへの改造を決断しました。炉端焼き屋のようにテーブル中心の囲炉裏は、燃える炭を見ながら囲むシーンそのものは美しいのですが、テーブルにしてしまったため、顔だけ熱く、机下の脚が寒い。伝統的に囲炉裏は床に切ってるのも、床座であれば、脚→顔の順番の距離となり、まさに頭寒足熱です。もともと大谷石で囲む囲炉裏であったため、そのまま囲炉裏の灰を薪ストーブに置き換えれば、大谷石が蓄熱し、脚も温かくなると踏みました。導入してから2年。薪ストーブに火があれさえすれば、常に天板はクックトップ状態で、お湯は沸いているし、加湿もできるし、家の中心から温まります。そして何よりもどんなに燃やそうとも、決して空気が汚れないこと。しかも排気しているので、換気装置でもあります。

裏山が杉林で、もっぱら伐採され放置された丸太を引き出して薪を作っていましたが、一昨年に樫の巨木の伐採の依頼で、知り合いの木こりを紹介し、その幹と枝を大量に引き取ってきました。固くて重い樫を手で割る自信が無く、設計屋魂に火が付き、エンジニアに協力してもらって、オリジナルな薪割り機を設計し制作しました。おそらくこのパワーで丸太を地面に置いたまま割れる世界最小の薪割り機が完成。次の冬に向け乾燥中です。足の早い杉に比べどれだけ火持ちがいいか楽しみです。


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